テキストサイズ

手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 祖母の位牌が安置された簡素な祭壇を眺めていると、改めて孤独がひしひしと身に迫ってきた。〝天涯孤独〟という文字が脳裡に浮かび、留花は堪(たま)らなくなった。込み上げてくる嗚咽を堪え切れず、その場に打ち伏して泣いた。
 ここのところ、夜になると、祭壇に向かって拝礼を行った後、その前に座り込み、何をするでもなくボウとして過ごすのが日課となっている。留花は一日に自分でも数え切れなくなるくらい拝礼を行った。拝礼は死者への敬意を表するものとして日に何度か行うのが作法となっている。
 しかし、それにしても、留花の拝礼の回数は度が越えていた。まるで、拝礼を行うことで、祖母の魂をこの現世(うつしよ)に繋ぎ止めておけるかとでもいうように、飽きもせずに同じことを繰り返すのだ。
 再び、表の入り口がかすかに揺れた。立ち上がった留花は新たに滲んできた涙を手のひらで拭う。女独りの住まいゆえ、扉には内側から鍵をかけてある。もっとも、鍵といっても、詫び住まいのことゆえ、少し力を込めればすぐに外れそうな簡素なものだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ