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手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

「お婆ちゃんが死んだんです」
 留花は泣きじゃくりながら言った。
「何と、訪ねなかったわずかな間に、お祖母どのが亡くなられていたとは」
 愃は信じられないといった顔で緩く首を振り、天を仰いだ。
「済まなかった。もっと早くに訪ねるべきだった」
 そのひと言が余計に留花のやるせなさを募らせる。十日近く前、愃は何の約束をしたわけでもない。現に、留花自身、愃と再び相まみえるとは考えてもいなかったのだ。殊に、祖母から愃が〝類稀なる貴人の相を持つ〟と聞かされてからは、努めて何も期待せず愃のことは忘れようとした。

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