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手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 この男(ひと)はいつも、謝ってばかり。自分は悪くないのに、優しい笑顔で〝済まない〟と言う。
 愃は祭壇の前に佇み、丁寧に三度、拝礼を行った。それから二人は向かい合う形で座る。留花は淡々とこれまでの出来事を語った。
 愃が帰ってから二日後の朝、留花が起き出してきたときには、既に香順が亡くなっていたこと。翌日、近所の人々に手伝って貰い、何とか弔いを終えたこと。
 話は祖母の若い時分にまで遡り、香順の想い出話のついでに、留花はつい、祖母が占い師であったことを話してしまった。
「ホウ、お祖母どのが占い師」
 愃は少なからずその話に興味を持ったようで、自分を見た香順が何か―彼の未来について語っていなかったかを訊ねた。
「いいえ、祖母は何も申してはいませんでした」
 留花は苦しい嘘をつき通すしかなかった。

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