
手紙~天国のあなたへ~
第4章 野辺送り
「で、でもっ」
一度は止まっていたはずの涙が不覚にもまた溢れ出す。
「これからはずっと私がそなたの側にいる。私の申したこの科白の意味が判るか?」
無言のままの留花に、愃が厳かな誓いの言葉を口にするかのように言った。
「私の妻になって欲しい、留花」
留花にとっては夢のような一瞬だった。
恋い焦がれたひとからの求婚。それは少女なら誰でもが願い、夢見るものだろう。
だが、二人の住む世界はあまりに違いすぎる。しかも、留花は愃について何も知らない。彼が〝愃〟であること以外、どこに住み、何をして暮らしているのかも。
彼が類稀な貴人であろうというのは、あくまでも香順が占った結果であり、愃について具体的なことは何も判っていないのだ。
出逢って三度目、互いのことを何も知らないのに、結婚しようというのは、あまりにも性急すぎはしないだろうか。仮に愃が王族であろうという事実を差し引いても、おいそれと頷けるものではない。
一度は止まっていたはずの涙が不覚にもまた溢れ出す。
「これからはずっと私がそなたの側にいる。私の申したこの科白の意味が判るか?」
無言のままの留花に、愃が厳かな誓いの言葉を口にするかのように言った。
「私の妻になって欲しい、留花」
留花にとっては夢のような一瞬だった。
恋い焦がれたひとからの求婚。それは少女なら誰でもが願い、夢見るものだろう。
だが、二人の住む世界はあまりに違いすぎる。しかも、留花は愃について何も知らない。彼が〝愃〟であること以外、どこに住み、何をして暮らしているのかも。
彼が類稀な貴人であろうというのは、あくまでも香順が占った結果であり、愃について具体的なことは何も判っていないのだ。
出逢って三度目、互いのことを何も知らないのに、結婚しようというのは、あまりにも性急すぎはしないだろうか。仮に愃が王族であろうという事実を差し引いても、おいそれと頷けるものではない。
