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手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 ふいに留花が身を捩り、クスリと笑う。
「どうした?」
「済みません。でも、急にそんなことされたら、くすぐったくて」
 愃が少し呆れたように片眉を上げて見せた。
「おかしな人だな。そんなところがくすぐったいとは」
 そう言いながら、留花のほっそりとした首筋に唇を寄せる。と、留花は彼の予想どおり、くすくすと笑い声を立てて身をよじった。
「いやだ、愃さまったら」
 愃にとって、それは予期せぬ発見だったらしく、それからしばらく狭い室内には留花の押し殺した笑い声とひそやかな衣ずれの音が響いた。
 その笑い声が痛みを訴える声、更に甘い喘ぎに変わってゆく。祖母が亡くなってから、留花は初めて愃の腕の中で泣いて笑った。

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