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手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 翌朝、留花はまだ夜明け前に起き出した。
 一月の夜明け前はまだ辺りに夜の名残が根強く残っていて、夜の暗さとさほど変わらないほどだ。
 留花が厨房で米を炊き、汁物(スープ)を作っている間に愃が起きてきた。愃は昨夜と同じように淡い紫色のパジチョゴリをきちんと纏い、居住まいを正している。これが一晩中、留花を優しくも烈しく幾度も抱いた情熱溢れる逞しい男だとは誰も思わないだろう。留花だって、いつもどおりの泰然とした愃を見ていると、昨夜の嵐のような一夜がまるで夢のように思えてくるのだった。
「おはよう」
 いきなり背後から声をかけられ、留花は飛び上がった。
「お、おはようございます」
 愃の顔をまともに見られず、恥ずかしくて思わず面を伏せてしまう。

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