テキストサイズ

手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 愃は別に何を話しかけるわけでもなく、留花が甲斐甲斐しく朝食の支度をしているのを愉しげに眺めていた。背中に愃の視線を感じているだけで、留花はともすれば昨夜の彼の優しくて悪戯な指先を思い出し、顔が赤らんでしまうのを自覚した。
 愃は武芸を嗜むのか、身の丈は男としてはごく平均的ではあるが、鍛え抜かれた体軀を持っている。贅沢や享楽に慣れ切った両班の軟弱さはなく、その身体は引き締まって筋肉もほどよくついていた。その節くれ立った指先が昨夜はずっと留花の身体をまさぐり、彼女の最も感じる部分を暴き立て、責め立てていった。
 自分が身体のあちこちに触れられて、あのような甘い声を上げるなんて、留花自身でさえ信じられなかった。愃は留花当人がこれまで触れたこともない場所を押し開き、優しく愛撫していった。
 昨夜のあれこれが脳裡に甦っただけで、胸の動悸が速くなって身体が熱を帯びてくる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ