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手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 どうせ生まれるなら、低い身分よりも高い身分の家に生まれた方がよほど幸せなのだろうと漠然と考えてきた。でも、愃の今の言葉から推し量るに、必ずしも王室や貴族に生まれることが真の幸せといえるのかどうか判らなくなってきた。
 三つで両親を失った留花には、両親と過ごした記憶が殆どない。しかし、代わりに祖母香順が叶う限りの愛情を注いでくれたから、祖母と過ごした想い出が数え切れないほどある。家族とは、夫婦、親子とはそういうものでないだろうか。いつも一緒にいて、互いの顔を見ながら暮らす、それが庶民の家庭ではごく当然なことなのに、両班や王族の屋敷では違うのだろうか。
「愃さまのお話を聞いていると、両班家に生まれることが果たして本当に幸せなのかどうか、判らなくなります」
 もしかしたら当人の前では口にするべき話題ではないのかもしれないけれど、留花にどうしても言わずにはいられなかった。

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