願わくば、いつまでもこのままで
第11章 邪魔者が一人
「…でも、どうでもいいだろ
どうせ俺は……
今まで通り兄貴に黙って譲って
実際そうしてただろ!?
しかも、俺が比奈ちゃんを知ったのは
兄貴の結婚式
最初から、兄貴の勝ちだ」
陽の頭の中に今までのことが思い出されていく。
馬鹿なやつだ
自分でもわかっていながら
今までのことを振り返り悲しくなって俯いた。
「おまえ、本当馬鹿だな」
兄貴はそんな弟にもはや
呆れを通り越す。
冷ややかな目を向けた。
陽は和斗の言葉に顔を上げるが
その兄の目に
苛つきを感じざるをえない。
「なんだよ、それは
俺のこと哀れとでもいいたいのか?」
和斗はその言葉に答えない。
陽は顔をしかめる。
だが本当は少し違う。
和斗の目は陽と和斗、
自分たち兄弟に対しての哀れみの目だった。