願わくば、いつまでもこのままで
第7章 キスしたい
「で、代入によりxが……」
比奈ちゃんに勉強を教わる最中
俺は少し落ちた眼鏡を人差し指で直す。
比奈ちゃんはその俺の姿を見て笑った。
「そういえば、陽君って視力低かったの?」
「え?ああ、まあ普段はいらないけど
勉強する時は眼鏡必要かな」
「へえ、陽君は眼鏡似合うね」
「そうかな?ありがと」
勉強を始めて1時間経ち、休憩に入った。
比奈ちゃんと雑談をし、疲れた眼を休ませる。
「最近どう?兄貴は元気?」
「うん。いつも変わらず元気だよ。
だけど和君はちょっと仕事熱心過ぎるとこがあるのよね」
「あんまり無茶するなって言っといてよ」
「うん、伝えとくね」
……やっぱり愛しあってるんだよな
兄貴のことを話す比奈ちゃんは
やっぱりどこかイキイキとしている
兄貴が……羨ましい…
「あっ、そういえば陽君」
「なに?」
「この前のプール、誘ってくれてありがと」
このとき俺は驚きで一瞬声が出なかった。
「あ、うん。どういたしまして…」
お互い避けていたと思われる会話を比奈ちゃんから話しだしたことに。
「本当、ありがと」
ここは、思いきって聞くべきか……?
「あのさ、比奈ちゃん」
「なに?」
「あの日、帰るとき
なんで俺が園田との話を終えてきたとき
自転車のところに比奈ちゃんはいなかったの?」
この時の比奈ちゃんの微妙な表情の変化を俺は見逃さなかった。
「……ああ、それね、ごめんなさい。
あんめり陽君が遅いから待てなくて、先に帰ったの」
「そっか……そうだったんだ」
……嘘、だろ?
それは本当のことじゃないよな
まあ、自分から本当のこと言えるわけないよな
比奈ちゃんは今どう思ってる?
俺のことを騙せたと思って安心してる?
良心を傷ませてる?
それとも嘘が通じたかどうか不安?
なあ、今君は何を思ってる……?