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CROW―二つの魂―

第1章 第一部:若き戦士の覚醒

そもそも抜刀術というのは相手に襲われる時の反撃、または襲う事を想定している。

抜刀時の初撃にはかなりの速度があり伸びもあるのだか、片手打ちであるためどうしても両手の威力には適わない。

そのため護身用、あるいは危機回避のための技術であり、積極的に使うものではない。

よってその構えは自然と待ちの姿勢になる。

だが玖郎の構えは、右足を前に出してギリギリまで折り曲げ、左足を後方に伸ばして膝を地面にすれすれに構え、まるで猫蚊の肉食獣が獲物に飛びかからんとする構えだ。

「被害者の中には年端もいかぬ子供や、赤ん坊もいた。母親も我が子を庇うように殺されていた。」

「あん?」

「子供たちには未来があった。母親も彼らが大人になるのを見届ける義務があった。それを貴様は奪ったのだ。自らの欲望のためだけに……」

「さっきから何を言ってやがる?」

「未来ある人たちの生を奪ったその罪、万死に値する。悪いが、この場で死んでもらおうか」

零番隊には、始末する人間の罪状を述べるという掟がある。

有無を言わさず殺したのではただの殺戮になって しまうからだ。

「できるものならやってみやがれ!!クソガキ がぁぁぁぁ!!」

大男が刀を構えて突っ込んでくる。

両者の間合いはおよそ五メートルほど。

男が動いたのと同時に、玖郎も動いた。

ギリギリまで曲げた右足のバネを使い、大男に向かって突進する。

一瞬のうちに大男の懐に潜り込む。

速い。

だが、目で追えぬ速さではない。

かまわず得物を振り下ろす大男。

しかし、刀を振り下ろした先に、玖朗の姿はな かった。

(消えた……?)

辺 りを見回す大男。

「どこを見ている」

その時、どこからか声がした。

慌てて辺りを見回すと、大男の腰よりも低い体勢 で刀を脇に構えた玖朗がいた。

「っ!?」

「……斬栽(ざんさい)!」

大男が反応する前に、玖郎は刀をを抜き様、腰から左肩にかけて斜めに斬り裂いた。

「あ、が……」

血飛沫を上げながら声にならない声をあげ倒れる大男。

「斬裁完了」

玖郎は一言そう呟くと、返り血も浴びずに刀にこ びりついた血を振り払い、それを鞘に収めて、玖郎は自分が斬り殺した大男には、一瞥もくれず去っていく。

その姿を最後に、九郎は目が覚めた。

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