テキストサイズ

カイダン

第3章 コモリ

妻が死んだ。それもまだ生まれて2ヶ月の息子を残して。俺の名前は秀明だ。俺は生きるのがつらかった。それ程までに妻、依子を愛していた。依子と知り合ったのは5年前、合コンで知り合った。可憐で大和撫子という言葉が合いそうな女性だった。依子とは話が合い趣味も似ていたので今度2人で合おうと約束した。とにかく話をするのが面白い人だった。真剣に俺の話を聞いてくれる人でもあった。仕事場での悩みなども嫌な顔一つせず聞いてくれた。6ヶ月ほどたっただろうか、俺達は結婚した。結婚してからも色々な事があった。些細な事で喧嘩をした。息子の名前の事でだ。俺は格好いい名前がいいので晃がいいと言った。しかし依子は優しい子に育ってほしいからと優希という名前がいいと言った。結局妻には勝てず優希になったのだが。
本当に楽しい日々だった。毎日が天国だった。仕事でつらい事があっても依子と優希がいれば忘れられた。
しかし悲劇はある日突然にやってくるものだ。仕事をしていると突然電話が鳴る。それは病院からだった。電話に出る。すると看護婦が声を荒げながら、「依子さんが、倒れました」と言ってきた。俺は仕事を忘れ病院にきた。依子の病状は何なのか、気にはなるが聞きたくなかった。もしその病状がとんでもないものならば俺は深く絶望してしまうからだ。看護婦がやってきて医者の前に案内してくれた。病状は最悪だった。「白血病です」俺はその言葉を聞いて周りが暗黒に包まれた。どうやら気絶をしてしまったらしいのだ。
俺は家に帰宅する。とにかく祈った。依子が元気に戻るように、と。
俺は何度も病院に通った。依子は日に日に弱々しくなっていき、髪の毛もすべて抜け落ちていった。そしてついに妻が死んでしまった日がやってくる。
妻は俺の顔をじっと見つめ、弱々しい手で俺の手を握りしめ、こう言った。「優希をよろしくね。ひでちゃん子守へただからしっかりね。」まだ何かいいたそうだったが依子は笑顔を見せ、涙を流し、そして握りしめていた手が力なく離れた。依子は死んだ。
俺は深く絶望した。周りを気にせず泣きじゃくった。体中の水分がなくなるんじゃないかと思うくらい泣いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ