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短編集

第12章 『境界線の爺さん』

そろそろ、私は空に溶けよう。

爺さんは声が渇れて出なくなるまで叫ぶだろう。

そのうち、荒野に倒れて私と同じように体を失うだろう。

荒野にはただ風が吹く。

そうして私と同じように心だけになって、いつしか空に溶けてしまうだろう。

私が爺さんだったか、爺さんが私だったか、それすらもわからなくなる。

私があなただったか、あなたが私だったか、それすらも。

そのうち、また生まれ堕ちることを願う。

身体を持った人間として。
そのときには、あなたにもいて欲しい。

互いに人であることを見つめ合うために。

自分のために、あなたのために。

自分がそこにいること。

あなたがそこにいること。

それは一人ではわからないから。

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