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短編集

第15章 『或る殺人の風景』

血が滴る。

胸に刺さった包丁は、呼吸と共に動いている。

はあっはあっ、ごぼっ…げはっ。

肺に血液が流入している。
気管支を血液が上がってくる。

吐血。

鮮血が飛び散る。

立っているのが、やっとだ。

死ぬんだな。

俺も。

痛みはないが、出血部が脈打っているのを感じる。

景色が揺らぐ、意識が朦朧とし、色が混じる。

因果応報か。

恨まれて当然だ。

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