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短編集

第1章 トイレット

―もう、無理だ。怪物に喰われてうんこを撒き散らすんだ。

男は観念した。
牛に謝っても事態は解決しない。

―返事しよう…。

「は、入ってます…」

静寂。

「入ってますー入ってますよー?」


反応なし。

―くそー!もうヤケクソだ!うんこだけに!


男は怒鳴った。

「入ってるよっ!!少し待てよ!いま出すところなんだよっ!ぶりっとよ!なめんなバカヤロー!!」

「えっ!?ごっ、ごめんなさい…」

―返事?えっ!?って?

女の子の声だ。
男が目をつけているかよちゃんの声だ。
便所の普通の出入口の方から聞こえた。

「ごめんなさいっ!」

―かよちゃんっ!!

ぶりぶりぶりっ…ブリっ!ぶべべべべべっ!ぷりっ!!

轟音と共に男は排便した。
「―ひっ!!」

タッタッタ、と、ドン引きのかよちゃんが走り去る。

「やってもたぁ~!」

うなだれる、男。

クスクスクス…。

左上を見上げると、小さな扉を開けて、怪物が頬杖をついて楽しげに笑っていたのだった。

おしまい。

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