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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第3章 LessonⅢ 悪意ある噂

「ここなら、とりあえず誰にも話を聞かれずに済むわ」
 普段から、どちらかといえば屈託ない紘子には珍しい。
「どうしたの、何かあったの」
「空惚(そらとぼ)けないでよ」
 紘子は軽く輝を睨みつけ、声を落とした。
「輝、昨日は誰とどこに行っていたの?」
 そのひとことで、紘子が何を言いたいのか判らないほど愚かではない。ましてや、受付嬢たちの反応から、既にあのことは社員の誰もが知っていると覚悟はしていたのだ。
 輝は小首を傾げた。
「紘子ちゃんは、どんな風に聞いているの、私の噂」
 質問に質問で返され、紘子はうっと詰まった。
「それは」
 口ごもった末、紘子は溜息をついた。

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