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あなたが消えない

第17章 震える心

翔がこのアパートを去って3日、1週間、1ヶ月が経過した。

日曜日の和男との休みの日に、リフォーム会社がうちに挨拶にやってくる。

「下で作業しますんで、ご迷惑お掛けすると思いますが、ご理解よろしく願いします」

「…はい」

私は返事をして、またリビングに戻ってソファーにうずくまる。

「今朝は下で、やけに物音がすると思ったらリフォーム会社っだって?永津さん、引っ越したのか?」

「そうみたい」

バカじゃん、コイツ。

今頃になって気が付くだなんて、本当に仕事バカだから、何一つ他で関心ない証拠ね。

私は悲しみの顔を隠すように、丸くなる。

「挨拶は?」

「知らない」

「挨拶なしか。なかなかの非常識人。おまえと同じくらい世間知らずだな」

和男は居なくなったからと、露骨に大きな声で言う。

もう…うるさい!

どっか行ってよ。

「ちゃんと102号室の奥さんには、挨拶してったってば」

私には無かっただけで。

だって私は、仕事へと行った後だったんだから。

「これで、あそこのご夫婦も俺達も気兼ねなく、生活できるな」

何それ、本当にバカじゃん!

「…ふぅ~ん」

すると、楽しげな102号室のご夫婦の笑い声がベランダから風に乗って聞こえてきた。

私は気兼ねなくだなんて、思わない。

私は全然、楽しくなんて過ごせない。

翔の居ない、こんな寂しい生活で。

声高らかに、笑えない。

翔の居ない、こんな悲しい生活で。

こんな離れ方、一方的にされたら、それこそ永遠に忘れられない人になっちゃうよ。

翔もバカだよ。

身勝手過ぎる。

「今日はのんびりするぞ~!んがぁーー!」

和男は大きな声でまた、背伸びをする。

はぁ~…。

本気で、うっとうしいと思った。

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