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あなたが消えない

第7章 完全に堕ちた

あれから、和男は夜になると私を求めてくる。

けれど、永津さんの言葉を思い出して、私は頑なに拒む。

下で、また聞かれている。

部屋まで来て、また何か言われる。

拒み続ける私に、和男はまた不機嫌になる。

欲しくない訳じゃない。

お風呂に入ると、布団に入ると、一人になると、身体がこそばゆくなる。

身体中の疼きを抑えようと、グッと瞳を強く閉じるのだけど。

おかしな事に、身体全体が欲しくなる錯覚が広がる。

永津さんの指先を。

永津さんの口唇を。

求めてない訳じゃない。

だけど、和男の感触に思わず拒絶してしまうのは、やっぱり永津さんの感触を求めているからなのか…。

私は床に顔を当てて、あの時の出来事を思い出す。

この部屋の真下に居る。

こんな近くに居る、永津さん。

嫌いな訳じゃない。

じゃあ、私はあんな事をされて、否定ばかりされて、釘を刺されても憎めないのは、傷付かないのは、どうしてなのだろう。

寂しい訳じゃないのに。

『妻にするわけないでしょ?あなただからですよ』

じゃあ、奥さんには見せていない部分を私には見せているって事?

何故、私に?

知りたくない訳じゃないけど。

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