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あなたが消えない

第7章 完全に堕ちた

ガタッ!

隣りの部屋の玄関が開く音がした。

やっ…どっ、どうしよう!?

翔は入れたまま、自分の口元に人差し指を立てる。

「シッ…」

私は他人の玄関で、何をやってるんだろう。

戸惑って、動揺してしまう。

私のその表情に満足したのか、翔は静かにまた動き出した。

…やだっ…いやっ…あっ…勘弁して…

声が出そうになる。

私は必死で口を両手で隠す。

でも突き立てられる一定の衝動に、感じられずにはいられなかった。

何度も頭を横に振る。

もう…ダメっ…んっ…んぅ…

でも翔は、私を冷めた目で見下している。

私は、それが。

翔の、その冷めた瞳を見ると。

「…はぁぁっ!…」

感じ過ぎて、のけぞる。

意地悪に動きに強弱をつけられて、

「…キモチいい…」

静かに腹の底から出てくる翔のその声に、また私は堕ちて行くのだ。

「んっ…」

隣りから聞こえてくる、生活音に私は怯えていた。

以前のアパートに居た時とは、全く違う生活音に怯えていた。

自分の不埒は生活音を、聞かれないようにと怯えていた。

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