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窓桜

第1章 1

ー小さな花を見つけた・・・ 綺麗で  脆くて  儚い・・・・ー

「あっ、もう春の風だ」

開けっ放しの窓から身を乗り出して外を見る。
冬には吹かなかった暖かい風が顔にあたって気持ちいい。
私の茶色い髪がなびいて、シャンプーの香りがサーッと広がった。
真っ暗な外には、星がきらきら輝ってすっごく綺麗で、月は世界で一つだけのスポットライトの様に桜を照らす。

「綺麗だな」

弟の祐介も窮屈な窓に身を乗り出してきた。
祐介はもう、高校2年生にも関わらず髪を一回も染めたことが無い。漆黒でつるつるとした髪はいつも私のお気に入りだった。

「祐、狭いよ」

肘で祐介の肩を押すと祐介はズルッと窓から落ちそうになった。
祐介の髪がが私の口元にあたる。ずっと昔から変わらない
シャンプーの香りがした。私がプレゼントしたシャンプーの香り。

「・・やめろよっ。落ちんだろ」

ちょっと本気でビックリしてる祐介は20cm以上おっきいくせに小さい。やっぱり可愛い弟だ。
長いまつげをぱちぱちさせながら、くすくす笑ってる。

「なに笑ってんのよ」

「いや、姉貴が考えごとしてるから面白くて」

少し怖い顔をしていただろうか、
バカにしたような言葉にしかめっ面をすると、祐介はまた笑いだした。

「なに悩んでんの?」

いきなり無表情になると真面目な口調で聞いてくる。

「なんでもないよ」

私の答えになっとくがいかないのか、祐介はきりっとした眉をハの字によせ、私をのぞき込む。

「そういう顔すると、やっぱり良い男ね」

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