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喫茶店ルノアール

第1章 1

「愛してたよ、聡美」
通いなれた喫茶店のカウンターに、彼女と俺の分のコーヒー代を静かに置くと直ぐに席を立った。
彼女の方からはさっきのように啜り泣く音は聞こえなかった。
最後に彼女の泣く声が聞きたかったのに、と冗談混じりに思いつつ(彼女が泣くというのはそれほどレア事なのだ)
もう一度だけ彼女を振り返った。
彼女は泣いている、
どころか微かに勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「なによ?考え直すつもり?」
そのとき俺は悟った。
俺は負けだ。
この恋愛ごっこは彼女の勝ちだ。

俺を・・・・
愛しているなら、彼女はこんな顔しなかったはずだ。
_俺はそう信じてた。

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