テキストサイズ

FREE BIRD

第64章 さよならは愛してるで

お互い同時に手を離した。


さよならは言えなかった。


だって人生なんてまだ長いから。


また逢えるかもしれない。


密かな望みが僕に別れの言葉を遮った。


美穂さんは踵を返し、駅の中へ消えて行った。



人混みの中、グレーのコートの後ろ姿は直ぐに見えなくなってしまった。


それでも僕は暫く消えゆく彼女の残像を見送っていた。


街は僕達とは裏腹に、もうすぐ迎えるバレンタインデーでハートが溢れていた。






ストーリーメニュー

TOPTOPへ