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赤い花~情欲の檻の中で~

第4章 MemoriesⅢ

「どうしたの? 顔が真っ青よ」
 彼女の丸い顔に愕きがひろがっている。今、よほど自分は酷い顔色をしているのだろう。
「あ、大丈夫よ。じゃあ、気を付けて帰ってね」
 美華子はそれでも精一杯の笑顔を拵え、彼女に背を向けた。数歩あるいたところで、また着信音が鳴った。恐る恐るメール画面を開くと、
―私の彼を返して。
 今度は、先刻と打って変わった哀願口調のメールが届いていた。が、内容からすれば、同一人物が送りつけてきたものであろうことは容易に想像できる。念のためにメルアドを確認したところ、二通とも同じものだ。

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