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青い春

第1章 えぴ

まだ寒さの残る志布志港。船のタラップから真新しいクロスバイクを下ろし、船舶でなまった身体をストレッチでほぐしてゆく。

「おい祐介。念入りにやっとけよ。何たって長旅になるんだからな。」

ほどけたサイドバックの紐を締め直しながら笑顔でショウが言った。

きっかけは卒業さし迫る4回生の秋だった。
神山祐介は就職をしなかった。
未曾有の経済危機と言われ友人達が就活に躍起になっている時にもどうしても力が入らなかった。

「どうすんだよシューカツ。もう動かないと来年の春にはフリーターにでもなるしかないぜ。」
学食の味気ない定食を眠た目でむさぼりながショウ見つめてくる。

「ショウは良いよな。親父さんの跡継ぐんだから。シューカツ何て関係無いもんな。」
ショウの父親は長野で建築材の問屋を営んでおり長男であるショウはが次ぐのは自然な流れだった。

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