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それでも、私は生きてきた

第70章 酷な期間

診察室を出てから、
今後の説明がありますのでこのままお待ち下さい。
と告げられた。

診察室の目の前に座ったまま
赤ちゃんの写真を見て涙を流し続けた。

入れ替わりに、お腹を大きく膨らませた妊婦さん。若い男女が手を繋ぎ不安と期待が混じった表情で診察室に入り、笑顔で仲良く診察室から出てくる姿。

20分ほど泣き続けながら周りの幸せそうな姿を見続け…耐え切れなくなった。


目の前を通り過ぎようとした看護婦さんに声をかけ、

すみません…説明があるとの事で待ってるのですが辛くて…。

すぐ呼びますね。


年配の看護婦さんは、優しく背中をさすってくれた。

すぐに看護婦さんが戻ってきて別室に呼ばれる。


出産か堕胎か…迷っていらっしゃるのですよね?


はい…。

初めての妊娠ですよね?

はい…。


ごめんなさい、すごく酷な事言います…。お腹の赤ちゃんね。もうすぐ10週になります。もしも、赤ちゃんとお別れするなら…これ以上お腹の中で赤ちゃんが大きくなると、お母さん…ユリさん自身の命も危ないんです。中絶は、すごく体に負担がかかります…。


そうですよね…。パートナーとちゃんと話します…。


もう9周過ぎてますから…もし、中絶を選ぶなら必ず休み明けまでに予約を取ってほしいの。それ以上は…ユリさん低血圧みたいですし、子宮もね…あまり丈夫じゃないから…。



私は、看護婦さんの「休み明けまでに」と聞いて、カレンダーを見て固まった。





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