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短編集・続

第1章 「すぺーすこんぱ」

いるわ、いるわ。
バカな野郎共が。
女の子つかまえてやることしか考えてない奴等が。
まあ、俺も他人のこと言えませんけど。

しかし、あいつらは酷すぎる。
浮き足だって、ふわふわして、地に足ついてねーもん。
まあ、無重力だから仕方ないですけど。
俺も浮わついてますけど。
オヴェェ。

吐いてないよ?

宇宙船の広間には、格好つけた痛い男たちが、テンション高めにスタンバっている。

ユリが俺に目配せをしてから、中央のブースに飛んでいく。

慣れてるな。

無重力に?

いやいや、甘いね、お兄さん。

無重力に慣れているのは当たり前。

ユリが、俺に目配せしたのは、俺に気があるけど仕事だからおいてけぼりにしてごめんね的なさりげない純情乙女の気持ちの現れとみせかけたお水ではよく使われるポーズで、そんなことは百も承知な客である俺は騙されないのだが、百も承知であることを実は知っているユリは俺に対して、お前は私の客だから他の女に貢いだらぬっころだかんな、と脅しをかけた目配せだったのである。

ふふん、慣れてやがるな、ユリっぺ。

しかし、俺は負けない。

何だかわかんないけど。

しかし、ユリっぺよ、俺のこと見すぎじゃねーか?

そんなに見つめるなよ。

って、何かおかしいと思ったらユリっぺ、俺の後ろに立ってるイケメン見てるじゃん?

イケメン、手を振ってるじゃん。

じゃんとか言っちゃったじゃん。

イケメンに対する目配せじゃん。

オヴェェ。

あ、なんか酸っぱいわ。

…吐いてないから。



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