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好きな人がいた

第9章 社会人五年目

相変わらず、年に一度は彼のことを街中で見かける。SNSのIDや歴代のハンドルネームだって覚えているから、ネットの上でも探そうと思えばいつだってストーキングできる。彼の実家の住所だって探せば年賀状がどこかにある。
でもそれをすることに意味なんかないともうわかっている。
十年前本気で傷ついて、泣いて、どうしようもなくなった私のことが今の私には理解できなくなってしまったけれど。もし今彼が目の前に現れて同じ出来事が始まったら私はきっとまた繰り返すだろうから。
繰り返さないために私は彼を忘れるべきだと思う。少なくとも理性が働いているうちは。

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