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ふたりのうた

第1章 ふたりのうた

月が綺麗な夜。

星が瞬いてまるで君のように美しい。

「…アホらし。」

次のアルバムのソロ曲、なんと自分で歌詞を考えなければならないと…。

ディレクターによれば、この提案は、これから帰る俺の部屋で待っている、やつが考えたんだとか。

「ただいま。」

「おかえり、ひな。遅くなるんならメールしてや。」

「あんな、お前が考えた企画のせいやで。なんで俺が、お前と付き合ってる設定で歌詞かかなあかんねん。」

「実際そうやんか。簡単やろ?」

「アホか!!逆にムズいわ!!スタッフもよう承諾したわ…。」

俺の後ろをにやにやしながら歩いてくるこいつにはあきれる。

ファンを楽しませるために様々な企画を考えてくれるのはいいのだが、なんか俺ばっかり痛い目にあってる気がする。

「なんでそう俺をいじめたがるん?」

リビングのソファーに鞄を投げてくるりとヨコに正面を向けて問いただした。

「いじめるなんて…。俺はひながすきやからいろいろしてんのに。」

そうゆうわりには口の端が微妙に上がっている。ベットの上でも同じ顔を見せる。

「…ほんまに、俺のこと好きなん?」

最初は気にする余裕すらなかったが、最近、ヨコの顔がはっきり見えるぐらいに余裕が出てきてしまった。慣れとは恐ろしい。

下から見上げる顔はいつも少し笑ってる。それが不安で仕方がない。

「どうしたん?急に。」

ふと鞄が控えめにと置かれたソファーに目をやった。

俺はそのソファーを手で叩いた。家でのみヨコがよく俺に向かってする行動だ。

「…できんの?」

「…俺かて男や。」

ヨコは俺が叩いたところに座る。そして、ゆっくりと寝転がる。ちょうど鞄が枕元がわりになる。

俺は背もたれとからだの間に足をねじ込んでヨコの体をまたいだ。

上から見てみれば、少しは変わるだろうかと思ったが、やはりいつもと同じ薄ら笑いを浮かべている。

「…ヤるんならはよヤれや。」

わざわざ足を広げて見せる。あまりに無防備で、思わずやめろと言って足を閉じさせたくなる。

ごくりと唾を飲み込めば、いつもされていることをすればいいだけやと言い聞かせてヨコの髪をつかみ、乱暴に口をふさいだ。

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