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玩具箱*R

第1章 あやしいおとこ*

「暑い…」

学校からの帰り道。
今日は終業式のため、午前中で学校が終わった

雲ひとつない青く澄んだ空に、
オレンジに照る太陽だけが光り、
住宅街のコンクリートがじわじわと揺らぐ。

額からは汗がたらりと滴る。


「暑いねー、でももう学校終わって夏休みじゃん!」

隣でぱたぱたと手で扇ぎながら、親友の明美が笑顔を見せる。

「 夏休みかー…、ふぅ…」

面白くなさげに私は明美から視線を変え、
まわりの住宅を見回す。

「そうだ!篠原さん、って知ってる?」

何かを思い出したかのように明美は目を光らせた

「篠原さん?」

「そう!」

私が名前を繰り返すと直ぐに返答が帰ってきた。
明美が小走りになり、ミルクのように白い屋根の可愛い家の前で足をとめた。

「ここ、篠原さんの家。」

アンティークの小鳥がちょこんと留まっている、ベージュの郵便受けのネームプレートには、“篠原”という文字が書かれている

「で、篠原さん?がどうしたの?」

スクールバッグからハンドタオルを取り出し汗を拭う。

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