
パパとママのタカラモノ。
第3章 新生活。
―――翌日。
犬の鳴き声で目が覚めた。
隣からは智ちゃんの寝息が聞こえた。
布団から起き上がって
カーテンを開けた。
今夜からまた入院生活か‥。
智也「奈央‥?」
振り向くと、智ちゃんが
両目を擦って私を見ている。
奈央「あ‥ごめん。起こしちゃった??」
智也「いや‥奈央、おいで。」
智ちゃんが両手を広げた。
私は智ちゃんの胸にしがみついた。
奈央「寂しいよ‥。仕事行かないで。」
子供じみたことを言う自分が
情けないとは思わなかった。
智也「今日も仕事終わったら行くから‥。」
奈央「やだ‥。病院に帰りたくない‥。」
智也「奈央‥。」
7時半過ぎ。
智ちゃんが仕事に行く
準備を始めた。
私は片時も
智ちゃんの側から離れなかった。
服の裾を握って
精一杯涙を堪えながら―――
智也「じゃ、行ってくるよ。おかん、奈央を頼むわ。」
「はいはい。智也も気をつけて。」
おばちゃんこと
義理のお義母さんは
泣き腫らした私の顔を見て、
智ちゃんを引き留めた。
「あ、智也。」
智也「何?」
「奈央ちゃんにキスしてあげたら?」
智也「はっ??」
奈央「えっ‥!」
「私は向こうに行ってるから。キス、してあげなさい。」
そう言うと
「洗濯、洗濯。」
と脱衣場の方に行ってしまった。
奈央「キ、ス‥?」
智也「はははっ‥。」
奈央「じゃあ、‥して?行ってきますのチュー。」
智也「行ってきます。」
一瞬、唇が重なった。
「やっぱり若いって良いわねぇ~♪」
お義母さんの声で
慌てて離れた。
智也「おかん!!」
「私は何も見てませんよー。」
奈央「‥ぷぷっ。」
お義母さんって
見かけによらず
面白い方のようです。
智也「やっと笑った。」
「智也、今夜も会いに行ってあげなさいよ。」
智也「分かってるよ。‥じゃあ行ってくるわ。奈央、また今夜な!」
奈央「行ってらっしゃ~い。」
今日はお義母さんと
西松屋で赤ちゃんの服とか
ベビーバスを購入する予定~。
「お昼前には出ようか。お昼は奈央ちゃんの好きなものでいいから。」
私は病院へと
戻る準備を始めた。
