優しくしないで
第10章 友情の取りこぼし
剣は私の部屋に入ると
すぐに背を向けた。
ゆっくり浴衣の帯を…外す
シュル…
『…太一、自殺なんか…しないよね』
シュルル…パサ
帯を床に置く音が…静かな部屋に響く…
「…いや…自ら…飛び降りたって」
あぁ…
ドサ…
私はしゃがみ込んでしまった…
「留美?」
着替える音が聞こえなくなり…剣は、恐る恐る振り返った
『…悪夢だったら…良かったのに』
「留美…」
浴衣を羽織るだけの恰好になっている私は…
着替えるのも忘れて…
床を…見つめ続けた…
『昨日…泣き過ぎて…涙が出ない…』