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雨の人

第6章 キスの先にあるもの

結局 ゆきは昨日

帰らなかった





いや…帰さなかった





今、ゆきは

俺の腕の中で

眠っている




とても

気持ちよさそうに。






狭いベットの中

ゆきを起こさないように

俺はじっとしていた




このまま

離したくない





しばらくすると

ゆきが目を覚ました





開けづらそうな瞳を

少し開き、俺を見る



俺と目が合った途端に

ゆきは

もう一度目を固く閉じて

恥ずかしそうに

布団の中に顔を埋めた





布団の中で


ゆきは


『川村さん……』


と、つぶやいた





ゆきは まだ

時々俺を

川村さんって呼ぶんだ





そう


こんなときは
いつも





俺は

黙ったまま


布団の中のゆきを



布団ごと

強く抱きしめた





すると



ゆきの

小さくて
かわいい笑い声が



布団の中で

俺の胸に響くように




聞こえた


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