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ロイヤル&スレイヴ!

第2章 1.ここが土鈴学園


「だからさ、名前で呼んで。俺も斎宮って呼ぶし」

「う、うん。……す、皇城くん」

「滝って呼んでくれてもいいのに」

皇城くんは小さな子供のように頬をぷくっと膨らませる。

出会って間もない相手+生徒会長のコンボは、さ、さすがにちょっと勇気が出ないです。

「そういうわけには……」

困ったように笑っていると、察してくれたのか皇城くんはそれ以上追求はしてこなかった。

そのかわり、うーんと何かを考えるしぐさをとっている。

しばらくすると、あ、と何か見つ
けたように目を見開いた。

「じゃあさ、斎宮はこの学校のことまだよくわかってないってことだよな?俺でよければ案内するよ」

願ってもない申し出は、とってもありがたいものだった。

が、すぐに皇城くんは思い出したように顔をしかめ、苦いものを噛んだ表情になる。

「あ、だめだ、俺今逃走中だったわ。
――今からは無理なんだけど。今日って入学式だけだから午前中でどの学年も終わるはずだからさ。
斎宮に用事がなかったら、放課後に学園案内させてほしいんだけど、どうかな?」

「いいの……?」

逃走中という物騒なワードは未だに気になるけど、それを差し引いても生徒会長さんのお手を煩わせるのではないか、
とありがたい申し出にもかかわらず、私は腰が引けた。

「いいの!手当てのお礼!」

ころころと表情の変わる皇城くんはとびっきりの笑顔で笑った。

つられて私も笑う。

「うれしい。ありがとう」

「じゃ、ホームルーム終わったら教室にいてくれる?俺、迎えに行くから」

「うん」

お言葉に甘えて、放課後は皇城くんのお世話になることが決まった。

生徒会長直々に学園案内ってちょっと贅沢かな、なんて申し訳ない気持ちもあるんだけれど。

親しく接してくれる皇城くんと話していると友達になれたみたいで、うれしかった。

私の転入先となるクラスを話した後、皇城くんは職員室のある本館まで案内してくれることとなった。

なんでも、私がさ迷い歩いていた周辺は特別棟とよばれる校舎だったらしく、

ここには理科室や美術室、あとは図書室とか音楽室など授業や部活動で使用する特別教室が集められていて、職員室がある本館はまた別なのだとか。

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