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ロイヤル&スレイヴ!

第2章 1.ここが土鈴学園

目線を首ごと動かして見上げると、目の前にそびえていたのは、クリーム色の壁だった。

屋根の涼しげな淡いスカイブルーは、空の青と同化しているように溶け込んでいる。

正門には両端に守衛さんがいて、そのすぐ傍には守衛室があり、
優しい笑顔のおじさんがこちらに視線を送っていた。

正門の壁からも伺える見事な桜が風に揺れ、花びらがふわりと舞う。

私は今、私立土鈴学園の前に立ちすくんでいた。だって。

おしゃれなレンガ造りの立派な正門の向こうにそびえる建物は、学校という言葉のイメージにそぐわなかった。

少なくとも、私のもっているイメージとは。

なんてこと無い遊歩道にまで、手入れの行き届いた芝生に、石畳。

ちょっとしたスペースにはレトロなデザインのベンチがあって。

淡い日差しのような優しいクリーム色の壁と屋根の青が広大な建物を彩り、海外ドラマに出てくる大学のキャンパスを髣髴とさせた。

先生。外観だけで、すでに圧倒されてしまいました。

心の中で、恩師に向けそっとつぶやく。
そして今度は独り言として、小さくため息。

私場違いだよなぁ、きっと。

おそらく後の2年間を過ごすであろう新たな学校生活の始まりに、私はもうひとつため息をついた。

とっても不安です。

平々凡々の暮らし(むしろ貧乏寄り)を送ってきた私を圧倒し、
萎縮させるには十分すぎるこの学校。

むしろ学校という名の別世界で。

この正門を一人でくぐることにためらい、なかなか足を進ませることはできないでいた。

もう一度、校舎へと視線を向ける。

桜の花びらがふわり、ふわりと踊る。

たとえ萎縮させる雰囲気の建物であってもここがまごうことなく、土鈴学園。


ひとつ深呼吸して、一歩踏み出した。

新しい制服のスカートがゆれる。

そして、もう一歩進む。

私の新しい学校生活の始まりだ。

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