
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
「番谷 猛。僕の一個上で未結とおんなじ2年生だよ。幼馴染なんだー」
へへ、っと屈託のない笑顔で答える楓くんは誇らしげにピースサインを胸の前で作ってみせた。
その様子から、ほんとうに猛くんのことを慕っているんだってわかる。
「そうなんだ。私もね、猛くんにはいっぱいお世話になってるの」
「あれ、未結も猛ちゃんの知り合い?」
くりんとした大きな翡翠みたいな瞳に疑問の色を浮かばせた楓くんはきょとんとした表情で私を見る。
う、かわいい。
こういうのを母性本能をくすぐられる、っていうのかな。
「あ、言ってなかったよね。
私、転校生なの。で、おなじクラスの猛くんには隣の席ってよしみでいろいろよくしてもらって」
「えー!そうなの、じゃあ僕の兄ちゃんのことも知ってたりする!?」
「楓くんのお兄ちゃん?えーと」
物覚えの悪い私の頭がどうにか記憶を探り始めるも、そもそもクラスメートの名前はおろか顔すらまだ全員覚えられていない。
左近衛、なんて苗字の人いたっかな、なんて思考をめぐらしてみるも
特定の人物を思い浮かべることは今の私には不可能に近い、かもしれない。
「リュウ兄!楯無柳也先生ー」
眉間にシワを寄せてはすっかり抜け出せないループに陥っていた私に、とびきりの笑顔で助け舟をだしてくれる楓くん。
彼の口から飛び出たのはというと、
なんと私と猛くんの担任の先生の名前。
「え、た、楯無先生?」
が、楓くんのお兄さん?
「うんうん。リュウ兄かっこいいっしょ」
はい、それはもう素敵な先生だと思います。
思いますが…
せ、世間ってほんとうに狭いんだな、と実感。
