
ロイヤル&スレイヴ!
第4章 3.ウワサのあのコとあの4人
滝の右腕を務める副会長の座に就いているだけあって、恭介は独自の情報網を持っている。
これまでも何度か彼のネットワークに助けられた滝は、人間性はさておき、恭介の能力だけは全面的に信頼していた。
信頼しているのはいいけれども。
「体育で遅くなるって、未結はちゃーんと言ってたんでしょ」
楓はやれやれ、と何度着いたかわからない溜息を落とす。
そんな楓をむくれて見遣ったのは机に突っ伏していた方――猛だった。
「だって、昼休み始まって結構経つだろ」
「猛ちゃんまでー!」
そもそも体育の後ということを耳にしていたので、三人とも未結が遅れてくるのは承知の上だった。
けれども、と猛は誰に言い訳するわけでもなくひとりごちる。
自分は未結と同じクラスだ。
当然時間割は同じなわけで、猛も同じ時間に体育の授業があった。
つまりは授業が終わる時間に大きな差はなかったはずなのだ。
猛の方はというと、昼休みが始まって五分ほどで着替えを済ませている。
それを言うと、楓は眉を吊り上げて「猛ちゃんは馬鹿ですか。ただ服着ればいいヤローと違って女の子は身支度とかいろいろあるの」と反論してきたが、
もちろん猛はそんなことを言いたいわけではなかった。
…俺が着替え済ませて教室に戻ったころには、クラスの女子の何人かだって戻ってきてたんだぞ。
あいつだけが遅いのって。
なにかあったんじゃないのか。
歯がゆい気持ちをぶつけるように、猛は突っ伏している机に自分の額をゴツン、と打ち付ける。
何か言葉にしようとすると、子供みたいな駄々しか捏ねないのが自分でもわかっていた。
あーもう。
なんで俺、こんなにダサいことになってんの。
ダサい自分への苛立ちをぶつけるように、猛はもう一度、額を打ち付けた。
