
偶然からの必然
第3章 何でここに…
「当店は、指名制とお任せ制に分かれております。指名の場合は、指名された者が他のお客様のところにいる場合、その者が席に来るまでに少々お時間がかかります。
待っているその間は、手の空いてる者がお客様の対応をいたしますので、ご安心ください。
一方、お任せ制はその時に手の空いている者が対応する、ローテーション形式になっております。
説明だけでは少々分かりにくいと思いますので、
早速試してみるのがよろしいかと。
申し遅れました。私は十六夜(いざよい)、と申します。
では、指名制に致しますか、それともお任せせいに致しますか?」
「あの…知り合いがここで働いてて、名刺をもらったんですけど…」
「見せていただせますか?」
十六夜さんにそう言われ、私は雅くんに貰った名刺を出した。
「ああ、貴方でしたか。別のバイト先の先輩とは。すぐに呼んで参りますので、先にお席に行ってお待ちください。そちらのお客様はいかが致しましょう?」
「あー、私はお任せ制で。」
と、旭は答えた。
「じゃあ、この子には俺がつくね。」
と言って、翡翠さんはウインクをした。
そして席へと案内され、雅くんが来るのを待った。
「それにしても君、可愛いね〜」
「いえ、そんなことは…」
「名前なんて言うの?」
と、どんどん翡翠さんのペースに飲み込まれて行く私。
「ち、千景です…」
「千景ちゃんかぁ〜、君は?」
「旭です。」
「そっかー、二人とも可愛い名前だね!」
「えー、名前だけですかぁ〜?」
「そんなことないよ、名前も姿も声も、全部可愛い。」
と、翡翠さんは旭を口説いていた。
み、雅くんもあんなこと言ってたりするのかな…?
だとしたら、今度カフェで会う時どんな顔して会えば…
などと、色々考えていると…
聞き覚えのある、元気な声がした。
「千景さーん!遅くなってすみません!!」
と、雅くんがやってきた。
その姿はカフェでみる時よりも大人っぽかった。
