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僕は絵しか描けない

第8章 コンテストの結果

「『デジタル式温州みかん』?」

詩子さんのネームのタイトルを見て思わず声をあげてしまった。

「そう。もちろん『時計仕掛けのオレンジ』にオマージュを捧げたストーリーよ」

時計仕掛けのオレンジとはこのサブカル研で大人気の映画だ。

原作の小説も含め、詩子さんに無理矢理観させられたので僕も知っている。

暴力的な表現が多く、正直好きに慣れなかったのだが……

「次はこの原作でいくから」

決定事項と告げられ、仕方なく僕はネームに目を通した。

舞台は近未来の東京。
将来の希望を持たない若者が刹那的な享楽を求めて好き勝手に暴れる話だった。

ただそうした自暴自棄な若者以外にも取り締まる警察や真面目な青年の視点でも描かれており、キューブリック監督の映画のような退廃感はなかった。


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