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近くて遠い

第13章 渦巻く気持ちと交わり

廊下を歩きながら、冷酷だと私が言った時の有川様の顔を思い出した。



言い過ぎてしまった…かもしれない…


お母さんに会ってくれていたなんて夢にも思わなかった。


嘘まで一緒についてくれるなんて…。


キュぅと胸が苦しくなる。
お皿を割っただけであんなに怒ったり、無理矢理キスしてきたり…それ以上も…。


やっぱりおかしいし困ることたくさんあるけど、
もしかしたら、ちょっと不器用なだけで本当はいい人なのかもしれない…。



「謝らなくちゃ…」



そう一人呟いていると、目の前で古畑さんが通った。


「おや、真希様」


軽く会釈をする古畑さんに慌てて私も会釈をした。



「あ、あの…有川様はいつお帰りになられますか?」


「光瑠様ですか?
先ほど昼食で戻られましたので部屋にいらっしゃるかと…」


そういいながら、古畑さんは何故か顔を歪ませた。


部屋にいる…?


なら今、謝りに行こう。


「分かりました、ありがとうございます」


「あっ、真希様っ」


頭を下げてその場を去ろうとする私を古畑さんが止めた。



「光瑠様は大層機嫌が悪うございますので…お気をつけて…」


「っ…わ、分かりました…」


機嫌が悪い…

私のせい…だよね…


何されるか分からないけど、やっぱりちゃんとお母さんのお礼は伝えたい…


私は止まりかけた足を進めて、有川様の部屋へと向かった。





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