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光瑠は自分のジャケットにくるまる真希を愛しげに見つめた。



どうしてそっちに身体を預けるのか…


自分とは逆に身体を反らす真希を、光瑠は起こさないように自分に寄り掛からせた。


小さな身体は、すっぽりと自分の中に収まってしまう。



「とても大事にされているんですね……見ていて僕が恥ずかしい」



向かいに座る酒田が、小さな声で光瑠をからかうように言った。



大事…


そうだ、真希は大事だ。



酒田の言葉を光瑠は心の中で繰り返した。



「まぁ、でも、社長がご執心なさるのも無理ないくらい美しいですね。」


酒田は光瑠の腕の中で小さく寝息を立てる真希を見た。


長く、艶のある黒髪。

目鼻立ちははっきりとして、口元は小さく可愛らしい。

白い肌は、
透けそうでまるで人形かと思わせるような光瑠のものとはまた違った、美しさがある…




「変な気を起こすなよ。」

じっくりと真希を眺める酒田を光瑠は諫めた。



そんな光瑠の鋭い目を見て、酒田はクッと喉を鳴らして笑った。


「何がおかしい」


光瑠は片眉を上げて、真希を起こさないようなるべく小さな声で言った。



「いえいえ…、もちろん変な気を起こすような勇気は僕にはありません。ご安心を。」


酒田は撫で付けた髪を触りながらそう言った。


真希は美しい…


だけど、バックに社長が控えているんじゃ、近付きたくても誰も近付けないだろうと、思った。

光瑠がこうまで変わったことは、酒田には大変な驚きだった。


特に何も動じることのない社長が、小さな娘一人の存在だけで、嫉妬し、自分に牙をむく。


おかしい。
からかわずにはいられない。


酒田は光瑠の弱味を握ったような気分になっていた。


「ん…」



小さく声を出した真希を光瑠は素早く見つめた。



「どうした、寒いか」



光瑠はジャケットの上から優しく真希の腕をさすり、返事を待つ。


だが、真希は何も応答せず、光瑠のシャツをぐっと握った。


その仕草に光瑠は自分の胸の底から何か沸き上がるのを感じた。