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近くて遠い

第31章 空虚な生活

────────…

静かな食卓。


私はお箸を持ったままぼんやりとしていた。



「真希…」



「…ん?」



「うまいよ、これ。」



「……よかった。」



私は、軽く笑いながらお父さんにそう返した。



あれから2週間近くが経とうとしている。



私と隼人は、
再び元住んでいたアパートに戻ってきた。




お父さんは、

私と隼人を見た時大きく目を見開いた後、『おかえり』と何度も言って力一杯私たちを抱き締めた。



お父さんの事を許したわけじゃない。


やはり、私たちを置いて出ていったという事実を消すことは出来ないから…


でも、
行き場がなかった。



要さんは自分のところに来るように言ってくれたけど、迷惑は掛けたくなかったし、もう人に頼って生きる事はしたくなかった。



それに…
お母さんの最期の言葉と
街で会ったお父さんの言葉が、
頭をぐるぐるしていたのだ。


どんなにひどいことをしたとしても、

お父さんは、お父さん。


そのことが変わることはないのだ。


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