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近くて遠い

第34章 Sweet Night

─────────…


えっ!と身体を強張らせた時には、腰を片手でグッと引き寄せられていた。



「このカクテル、
すごい甘いんです。
僕はいつもは頼まない。」


近すぎる整った顔。


目付きはさっきよりも蕩けているように見えた。



「じゃあ…なんで?」



辛うじて答えた私の唇を

要さんが熱く見つめていた。



「何故って…
下心があるからです」



下心…?



唇が重なりそうで重ならない……



そんな距離で要さんが話す。



「かっ…要さんっ…?」



無意識に身体を逃がそうとするけど、しっかり腰を掴まれていて身動きが取れない



「このカクテルは

ブランデーと生クリームと



"カカオ"・リキュールを



混ぜたものだから──」








「えっ……んんっ…!」





要さんはそう言って私の唇を激しく塞いだ。



顎を支えていた手が気付いたら私の後頭部に回っていて、

甘い舌が私の口内に入り込んだ。



「ぁっ…んんっ……」



予期せぬその絡みに私は驚いて身体をビクつかせていた。



自分の口の中に広がっていた柑橘系の味が、要さんの口から広がるカカオの味と交ざる…



アルコールで熱くなった要さんの舌が私の舌をゆっくり、でも激しさも兼ね備えて絡める。



「…っ…
キスの味も…
美味しい方がいいと思って──」



キスの合間に
要さんが言葉を洩らす。



「んぁっ…」



私は息もするのも精一杯で、完全に要さんに流されていた。



初めて見た要さんの男の顔──



たまに洩れる色っぽい吐息に私の身体は痺れていた。



「ひゃぁっ!」



急に力強く腰を引き付けられたかと思ったら、私はゆっくり後ろに押し倒されてしまった。



「真希さんっ……!」



「あぁっ…」



要さんの熱い唇がいつもより露出した私の首筋を這う。



「か、要さんっ…ちょっと待っ──」



必死で動きを止めようとする私の唇を要さんがまた塞いだ。



その優しい中に見える強引さが


私の知っている感覚とリンクして



急に胸が痛んだ。



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