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近くて遠い

第40章 温かな場所

─────────…


優しく微笑んで私を離した要さん。


私はそんな要さんを目で追うようにして立ち上がり、
そしてゆっくり振り返った。



目に入った、二つの大きな背中。





要さんは、何かを光瑠さんに言うと


振り向きもせずその場から立ち去っていった。




扉から差し込んだ夕日に



白いスーツが反射して


暖かな色になる。




光瑠さんが


クルリと振り返った。




ふと
radiceで、

私を助けてくれた時のことを思い出した。





光瑠さんが


ゆっくりと私に近付いてきた。


そして
唇をぎゅっと噛み締めて、私の手前で足を止めると、


躊躇いがちに私に手を伸ばした。




「ひか…る……さん…?」



光瑠さんは伸ばした手を止めて、手のひらをぐっと握ってうつ向いた。



「…っ…すまなかったっ…」



え……?




震えながら光瑠さんが呟く。



「俺のせいでっ…
お前をっ…殺しかけたっ…!

本当にっ…本当にっ…
すまなかったっ……」




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