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近くて遠い

第44章 根源

「きゃあっ!
有川さまぁっ!お久しぶりです~!!!!」



彼女たちは光瑠さんを見つけると、黄色い声を上げてわらわらと光瑠さんを取り囲んでいった。



びっくりしたように目を丸くした光瑠さんは、うざったそうにしながらも、満更でもない顔をしている。



なんか……


むかつく………



フンッと顔を背けると、
一際綺麗に着飾った人が出てきて目が合った。



「あっ、あなたっ…」


「夕夏さん……」



この店不動のNo.1

如月 夕夏 (きさらぎ ゆうか)


が私を固まったまま見つめていた。


「……あら、丁度良かったわ。夕夏、話したいことがあるんじゃない?」


幸ママがそう言うと、夕夏さんは少し目を泳がしたあと、私に近付いた。




幸ママは夕夏さんに微笑むとその場から立ち去った。

ギュッと口を引き結んだまま視線を下に落とす夕夏さん


しばらく沈黙が続いて、
光瑠さんのところにいる女の人たちのきゃーきゃーいう声だけが聞こえてくる。



大事にしていた要さんの傘を、
目の前で笑いながらポキポキ折られた時の恐怖を思い出して、私は身体を震わせていた。



「…………ごめんなさい…」



え…?


わなわなとしながら、微かに聞こえた声に私は耳を疑った。



「あの…いま、なんて──」



「だからっ!……

あの時は…あなたが大事にしていた傘を壊してごめんなさい!」




語気を強めながら、謝る夕夏さんを私は呆然としながら見ていた。



「……新人のくせに、
指名されて…」



「………」



夕夏さんは顔を上げると私をじっと見た。



バッチリとメイクをされ凛とした顔立ちが微かに歪む。



「仕方なくこの仕事をしてます…みたいな顔しているあなたがムカついたの…」


「夕夏さん…」




あぁ…


この人は

本当に根っからのNo.1なんだ



と、そう思った。



強いプライドを持って、
この仕事をやっているんだ──

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