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イケない同棲生活

第7章 直弥






「…追いかけても、くれないのかよ」




とぼとぼと一人で道を歩きながらぼそりと独りごちる。




一旦ひいたはずの涙が、また一筋流れた。



…あれから数時間。街を彷徨っていたけれど、真弘から連絡すらこなくて。




ショックをうけつつ諦めた私は今。




「帰る場所…ないの忘れてたよ…」



複雑な心境を抱えたまま、あの大きな屋敷の前に立っていた。




今朝まで彼と穏やかに過ごした、私たちの住む家に。





「やだ、なあ…」




はあ、と溜息を吐くけれど、冬の夜はやっぱり寒くて。



そういえば今日、雪が降るとか言ってたなとか考えながら、ゆっくりと玄関に入った。




「、」




そしてふと目に入ったそれに、思わず立ち止まる。




和風の玄関には酷く似つかわしくない、真っ赤なヒールが脱ぎ置かれていた。




その横には、真弘の靴もあって。




まるで絡み合いながら脱いだかのように散乱していた。





「……」




なんでか嫌な予感しかしない。




”嫌な予感”これだけで止めればよかったのに。





心の中が黒で巣食って、”やめろ”と内側で叫んでいるのに、私は静かに靴を脱いで、



足音をたてないように、寝室へと歩いていった。




そして、私を迎え入れるように開きっぱなしの襖に更に鼓動を早くさせながら、そっと部屋を覗いた。








神さまは、どこまでも意地悪だと思う。








「ひろちゃん、いきなり押しかけて、ごめんね」




「別に、お前がこうやって押しかけてくるのはいつもだろーが」




「ふふっそのぶっきらぼうな言い方、全く変わってないんだから」




縁側に腰掛ける、寄り添う男女。



女性は半裸で真弘に寄りかかり、親しげに”ひろちゃん”と呼んでいて。




それに怒りもしない真弘が、さっきまで私を愛撫していた手でその女性の頭をなでていた。



その雰囲気は、あきらかに”普通”ではなかった。





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