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案内屋 〜アンナイヤ〜

第1章 きさらぎステーション 其ノ一

それはもう本当に、つまらない人生なのだ。
何かが起きるワケでも無く、いつからか望んだ非日常など訪れない。
そもそも僕は高校を卒業して、進学も就職もせずただのフリーターになった。
いや、厳密に言えばニートだろう。卒業してから一ヶ月、ほとんど外に出ることは無かった。
行きたい進学先はあった。あわよくばせめて、高卒就職でも良かった。
ーそう簡単にはいかない。いかせやしない。ー
青春真っ只中の高校生活最後に、現実とやらにそう言われた気がした。
とにかく僕は、退屈なのだ。
人生がそれはもう本当につまらないのだ。
そんなつまらない人生の中で、最も厄日なのは今日かもしれない。

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春、5月始め。塔凛丸は一ヶ月振りに外に出ていた。
しばらく自室に篭っていた分、両親は息子が部屋から出てきたことへの喜びと、「何をするのだろう?」という一抹の不安を抱えていた。
凛丸もまたそれを背中に感じたが、しばらく振りの太陽の陽射しを浴び、玄関を発ったのだ。

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