
やっと、やっと…
第13章 命
姉は私が話しやすいように
私を見なかった
前を向いてただ頷きながら
私の背中に手を置いて撫でてくれた
私は全てを話した
去年、圭介に好きだと告白されてから
圭介の少しの変化や
繰り返された暴力や性行為
智己が助けてくれたこと
智己を傷つけたこと
一か月前のこと
そして遥と香菜に相談をしたこと
全てを打ち明けた
涙が止まらなくなって
上手く話せなくても
姉は最後まで、何も言わず
優しく聞いてくれた
全てを話し終わって姉の方を見ると
姉も涙を流していた
「辛かったね・・・
ごめんね、何も気づいてあげられなくて」
姉は私の手を握って
声を震わせながら言った
「実はね、お母さんに少し聞いてたの」
「え?」
「最近、唯の元気がないって
ご飯もあんまり食べないし
体調もよくないんでしょ?
この間学校を休んだのも
風邪なんかじゃないと思うって・・・」
「お母さん・・・」
母親も私の変化に気づいていた
学校の話題もできるだけ話すようにはしていたけど
無理やり話していたことも、きっと分かっていたんだろう
「この話は、お母さんにも
言わないほうがいいかもしれないね」
姉は涙を拭いてそう言った
「黙ってるの?」
「うん。
お母さん、こんなこと知ったら傷つくよ
唯がこんなに我慢してたなんて
唯が傷ついていたなんて知ったら
お母さん、
気付けなかった自分を責めちゃうんじゃないかな」
確かにその通りだと思った
優しい性格だから
きっと自分に非があると
責めてしまうだろう
「でも、
唯はこのままじゃだめよ
怖いかもしれないけど
もう逃げるのはやめよう」
姉の言葉には力強さがあった
「このまま唯が我慢して苦しむなんて
私だって傷つくから
ちゃんと圭介君に話しなさい」
私を諭すように、
勇気を与えるように強くはっきりと言ってくれた
「うん、ありがとう、お姉ちゃん」
私には心強い味方がいる
遥と香菜も、お姉ちゃんも
打ち明けることができたんだ
あとは伝えるだけ
圭介に、本当にもう、終わりにしようって・・・
