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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

「お前、身ごもってるんだろう? 何で、俺にその膨らんだ腹を見せたがらねえんだ?」
 清七は、お須万の腹を凝視しながら、目まぐるしく思考を回転させる。
 この腹のふくらみ具合なら、今はやっと六月(むつき)に入ったところか。だとすれば、この腹の子は、お須万の胎内に宿った赤児は―。
「この腹の子は、あのときの子か? 俺の―、俺の」
 しかし、お須万は最後まで言わせなかった。

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