テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

「亡くなった時、子どもはまだ八ヵ月の乳呑み児でした。親馬鹿なようですが、可愛い盛りで、私が少しでも傍を離れると後を追って這ってきて泣いたものです。伜が亡くなってからというもの、私は夜毎にどこかから赤ン坊の泣き声が聞こえてくるようになりました。この江戸の町のどこかで、あの子が、慎太郎が私を探して泣いている―、早く慎太郎を見つけ出して抱きしめてやらなければと思い、夢中で家を飛び出すのです。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ