テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第3章 春の夢 参

 今になって、そんなことを訊いて、どうするというのだ。あの夜、確かにこの女は言ったではないか、清七の腕の中であえかな声を上げながら、涙に濡れた眼で清七を〝慎之助〟と呼んだのだ―。
「それで、お前はまだ、あんなことを続けてるのか?」
 清七が乾いた声で問うと、お須万は力なく首を振った。
「いいえ、今はもう夜に店をこっそり抜け出したりはしておりません」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ